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雑記帳

◆[所得税法56条についての最新判例について]  H16.11.4 

 平成16年11月2日、最高裁第三小法廷は、居住者の営む事業に従事して対価の支払いを受けた親族が居住者と別に事業を営む場合であっても所得税法56条の適用があるという判断を下した。

     この事件はいわゆる妻弁護士事件と言われるものであり、夫である弁護士がこの委任した業務内容が明確でないのに、毎年妻の収入の約4分の1に相当する金595万円ずつを支払ったという事案である。

     この点、私の事件とは事案を異にしていると考えられるが、私の事件が同じ第三小法廷に係属していることから気がかりな判決である。

     今後、最高裁判所での調査官面接などをとおして事案の違いを充分に説明する必要があると思われる。

 

    以 上

 

        ■以下、最高裁判例をご紹介します

 

         判例 平成16年11月02日 第三小法廷判決 平成16年(行ツ)第23号 所得税更正処分取消等請求事件

         要旨:1居住者の営む事業に従事して対価の支払を受けた親族が居住者と別に事業を営む場合であっても,所得税法56条の適用がある

          2 居住者の営む事業に従事して対価の支払を受けた親族が居住者と別に事業を営む場合において,居住者の事業所得等について所得税法56条を適用してした処分は,憲法14条1項に違反しない

 

       内容: 件名 所得税更正処分取消等請求事件

          (最高裁判所 平成16年(行ツ)第23号 平成16年11月02日第三小法廷判決 棄却)

       原審 東京高等裁判所 (平成15年(行コ)第175号)

 

主    文

 

       本件上告を棄却する。

       上告費用は上告人の負担とする。

         

理    由

 

     1 上告人及び上告代理人森貴子,同服部訓子の上告理由第1について

     所得税法56条は,事業を営む居住者と密接な関係にある者がその事業に関して対価の支払を受ける場合にこれを居住者の事業所得等の金額の計算上必要経費にそのまま算入することを認めると,納税者間における税負担の不均衡をもたらすおそれがあるなどのため,居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む事業所得等を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には,その対価に相当する金額は,その居住者の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入しないものとした上で,これに伴い,その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は,その居住者の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入することとするなどの措置を定めている。

     同法56条の上記の趣旨及びその文言に照らせば,居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合であっても,そのことを理由に同条の適用を否定することはできず,同条の要件を満たす限りその適用があるというべきである。

     同法56条の上記の立法目的は正当であり,同条が上記のとおり要件を定めているのは,適用の対象を明確にし,簡便な税務処理を可能にするためであって,上記の立法目的との関連で不合理であるとはいえない。このことに,同条が前記の必要経費算入等の措置を定めていることを併せて考えれば,同条の合理性を否定することはできないものというべきである。他方,同法57条1項は,青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む前記の事業に従事するものが当該事業から給与の支払を受けた場合には,所定の要件を満たすときに限り,政令の定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものの限度で,その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入するなどの措置を規定し,同条3項は,上記以外の居住者に関しても,同人と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその事業に従事するものがいる場合について一定の金額の必要経費への算入を認めている。これは,同法56条が上記のとおり定めていることを前提に,個人で事業を営む者と法人組織で事業を営む者との間で税負担が不均衡とならないようにすることなどを考慮して設けられた規定である。同法57条の上記の趣旨及び内容に照らせば,同法が57条の定める場合に限って56条の例外を認めていることについては,それが著しく不合理であることが明らかであるとはいえない。

     以上によれば,本件各処分は,同法56条の適用を誤ったものではなく,憲法14条1項に違反するものではない。このことは,当裁判所の判例(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁)の趣旨に徴して明らかである。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

     2 同第2について

     民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ,論旨は,理由の不備・食違いをいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,上記各項に規定する事由に該当しない。

     よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

    (裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖)

弁護士 宮岡 孝之