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雑記帳

映画鑑賞−それでもボクはやってない−

 日曜日に、「それでもボクはやってない」を見ました。ある意味でショックでした。それは逮捕され警察に連行されて、不安に駆られている人に我々弁護士がどのように見えるかということを、弁護士との間を仕切るアクリル板の向こう側から見た視線を感じたからです。例えば、名刺をアクリル板に立て掛けているシーンや、難解な用語を駆使して事実関係を聞き出そうとするところなどです。

 当番弁護士は、君が拘留された理由はという問いかけをします。拘留と言う言葉自体が分からなければ、何とも答えようがありません。私は、自分がどうしてあなたに会いに来ることになったか、そして、自分が与えられている資料は、あなたの名前と、罪名、警察署の場所だけだという説明をしたうえで、「何も事情を知らないから警察と同じ質問になるけど、どうしてここにいるのか教えて欲しい。」と話していました。

 その中には、自分はやっていないと言う人も何人かいました。でも、正直に言って、そう言われると「えっ」長く掛かりそうだと思う反面、本当にやっていないなら何とかしなくてはという思いが交錯します。

 私が取り扱った中にも痴漢冤罪を主張する事件がありました。被害者と被疑者の主張のいずれが正しいかは、正に一対一の対立構造になっていますから、被害者の証言だけで有罪というのは、釈然としません。しかし、現実には被疑者と何の利害関係もない被害者が嘘をいう必要はない、勇気をもって痴漢と訴えたことを重く受け止めるというのが現実の裁判です。私も同じ時間にビデオを持ち込んで撮影して、被害者の主張するような被告人の動きは困難であるということを刑事裁判で争ったことがあります。また、被害者が法廷で捜査段階では主張していない事実を主張し始めて、不自然であると指摘をしたこともあります。しかし、いずれも認められませんでした。このような経験から映画の中で交代した裁判官が被告人は犯人ではないという目撃証人に「あなたが、被告人を直接見た時間は」という質問は判決にどのような影響を与えるかも感じていました。

 この映画を見終わって、どんなに忙しくても、弁護士たる者やはり刑事弁護をしなければと考えています。

弁護士 宮岡 孝之