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雑記帳

◆[弁護士になって]  H16.5.28

 司法研修所での司法修習を終了して、弁護士登録をした時に弁護士としての色々な目標をたてます。

 特に、私のように司法試験合格まで長期間要した者は、弁護士になったことの一種使命感のようなものを持っていたような気がします。

 私は、最高裁判所で口頭弁論の機会を得ること、無罪判決を勝ち取ることを考えてました。この目的の一つは弁護士1年目の事件で達成することになりました。

 事件の概要は、地方都市に本店のある会社が設立以来東京で株主総会を開催していました。代表権争いで敗れた旧代表者が招集地違反を理由として株主総会の決議取消を求めたというものです。確かに、旧代表者も招集地違反の株主総会を開催していたのですから、この旧代表者がその点を問題とするのは疑問なしとしないという見解はあり得るところです。

 しかし、株主総会の招集地は株主の利益保護のための規定ですから、旧代表者も株主である以上、その取消を求められるということが出来るという方が制度趣旨には合致しているように思われます。

 第1審ではこの取消を認めました。これに対して、会社側が控訴したところ、高等裁判所は、開催地違反はあるが決議に影響を与えないとして裁量棄却しました。私は、この事件に弁護士1年目で関与することになって、控訴審の口頭弁論に立ち会いました。高等裁判所では和解勧告(招集地を本店所在地とする株主総会を開催して、同様の決議をするという内容だったと記憶しています)されましたが、こちらは第1審で勝訴していたこともあり、これに応じないという回答をしたというだけで具体的な審理は行われませんでした。

 ところが、控訴審は既に述べたように1審とは逆の結論を出したわけですから、依頼者にすれば意外の感を強く持ったに違いありません。そのことが依頼者をして「弁護士が代われば結論が代わるのか」という言葉を吐かせたのだと思います。

 私とすると、控訴審に実質的には関与していない訳ですから、この発言は心外でした。

 しかし、依頼者にはそのようにしか映らない以上この控訴審判決を覆すしかありません。そこで、上告理由書を作成することになるのですが、最高裁判所の審理は書面審査であるだけに、どのような主張をすることが効果的であるかを考えました。考え抜いた末に思いついたのが、先ず、批判の対象を特定するという意味で、原審の構造という項を作り、そこで原審の結論及びその理由を簡潔にまとめるということでした。

 なお、ここで注意しなければならないのは、ここでの要約が上告人の一方的な見解では調査官がそのまとめをその後の理論展開の対象としなくなるということです。そこで、出来る限り簡潔かつ正確にまとめることにしますが、やはり批判の対象としてのまとめですので、その限度での目的を達成するような工夫が必要となります。その上で、上告理由の展開をしなければなりませんから、そこで、立法趣旨、具体的な問題点等の論理を展開していくことになります。そのような方法で作成した上告理由書を提出して、3年経過したある日最高裁判所の書記官から「口頭弁論を開催するので日程の調整がしたい」という電話がかかってきました。このことは言うまでもなく高等裁判所の判決を変更するためであることは明らかですので、私の思いが遂げられたことになります。この口頭弁論には高等裁判所で勝訴した司法試験受験指導で著名な被上告人の弁護士も出頭されましたが、その先生が最高裁判所での口頭弁論について受験生に話していたことを聞いて、やはり弁護士なら誰でも最高裁判所の口頭弁論に立ち会う機会を持ちたいのだと良く分かりました。

 この判例は、模範六法の商法第251条の参照判例として、「定款に別段の定めがないのに本店所在地またはこれに隣接する地に招集しなかった場合について、総株主540名(発行済株式総数768万株)のうち、本件総会出席株主は206名(その持株総数は488万株)であり、その全員の賛成で決議が成立し、10年以上にわたって東京都内において総会が開催され、株主から異議が出たことはなかったとしても、右の違法は重大でないとも、本件決議に影響を及ぼさなかったともいえず、本件決議の取消請求を棄却することはできない。」と紹介されていますが、判決を作った者としては様々の思いや工夫があったことを知ってもらえればと思いこのような雑粉を書いてみました。

 この判決及び上告理由書の全文は、判例時報第1477号140頁に紹介されていますので、興味があればご覧下さい。

 

 ・・・・次回をお楽しみに★

弁護士 宮岡 孝之